【完】白衣とお菓子といたずらと
それにしても今日の小川さんは破壊力抜群だったな。


静かにしまった扉を見つめながら、頭の中で呟いた。


何度も彼女の言動にドキドキとして、触れてみたいという衝動に駆られて、自制するのが大変だった。


そんな俺の感情を嘲笑うかの様に、俺の心を掴んで離さない。


彼女の行動や言葉に、日ごとに俺は彼女に嵌っていっていた。


彼女の手のひらの上で転がされているような、そんな感覚すら覚える。


けれど帰り際にした俺の怪我の話しで、はっきりと目が覚め、そして落胆する。


俺と彼女の関係は患者とセラピストであって、それ以上でも以下でもない。


こんな表現のしようのない関係になっているけど。


想い人がいる彼女にとって、俺なんか話しやすい同僚程度なんだろうな。


それでも俺は、彼女の事を好きだと、認めるようになってきていた。


もし彼女の叶わない想いの辛さが、俺のところで少しでも癒されるなら、俺は彼女を静かに見守ってやりたい。いくら俺が傷つこうとも。
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