【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~


  【金獅子SIDE】


廊下を歩いていると、前方からこちらに向かって歩いてくる人影に気付く。


放課後になって大分たったこの時間、校舎ではないここを生徒が通るのは珍しい…。


………、


なんだあの女は?



一瞬、見間違いかと視線を逸らす。


そしてもう一度、まだこちらからはかなり遠い位置にいるその女に目をやった。



………、


どうやら見間違いではないようだ。




前方からは顔全てを覆うほどの長い前髪の、なんとも妙な女がこちらに向かって歩いてくるのだ。


こんな女など生まれてこの方見た事もなかったからかなり驚いて一瞬、足が止まりそうになる。


しかしすぐに視線をその女から外し、そして心を冷静に保つため息を強めに吸って吐き出した。



少し…、落ち着いた。


ジロジロと人を見るのはよくないな。



そう思った俺は視線がその女に行きそうになるのを何とか押し留めようと、必死になって真っ直ぐ前を見ながら歩いた。


それでも視界の端には、その女が少しばかりうつり込む。



近づくにつれ貧弱な身体つきの女なのに、妙に大きく感じる存在感に俺を引き付けた。


また、俺の視線がその女に向きそうになる。



いけねぇ…、


そう思いながら、なんとか押し留める。


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