【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
「待て」
思わずその女を呼び止めてしまった。
俺の声にビクリと反応したその女は立ち止まり、そしてゆっくりと俺を振り返る。
コイツから『紅』と同じ香りがした。
だからつい、呼び止めてしまったのだが…、
まさかコイツが『紅』の筈ないよな?
だってアイツは男だ。
女のコイツが『紅』であるはずがない。
そうは思うのにコイツのニオイと、『紅』が同一に感じたのだ。
たかがこんな平凡ごときのこの女に…、
『紅』と対面した時と同様、こんなにも胸が高ぶるのはなんでだ?