声が聴きたい
それから、母、美都子が警察に迎えに行くと和希は泣きつかれたのか、やつれた表情を見せていた。
叱ることはせず、まずは、入院先でもあった病院へ向かう。
土曜日で担当医がいるか、分からなかったが運のいいことに心療内科の医師は土曜日にも関わらず院内にいて、見てくれることになった。
内科的な診察は、松田先生に後で診てもらうことにした。
心療内科の医師と、耳鼻科の医師が診察にあたり、和希は前回同様、ストレス性の突発性難聴になっていることがはっきりとした。
今回は半年前とは違い、無音状態になっている、これは難聴としてはかなり重い。
このまま、今まで通りに公立小学校に通うことは難しいので、紹介する聴覚特別支援学校で学んではどうかとの話にまでなる。
ようやく、日常が楽しいと感じられるようになっていた和希を乱すだけ乱した母親希美花は、その後も現れることはなく、佐藤家に電話もなかった。
気まぐれ、としかいいようのないこの行動によって、和希は2度も母親に見捨てられるという辛い体験を強いられた。
半年前よりも強く心に傷がつき、一時的ではあっても全く音が聴こえなくなるという事態になった。