例えばここに君がいて

 諦め半分で物置部屋に入ると、そこにもう一人母さんに逆らえない人間を発見する。


「あー、サトル。そこからいらないものゴミ袋に突っ込んでくれ」

「……おつかれ、父さん」


もはや疲れ果てたという様子の父親。
そういえば朝からガタガタ言ってたし、ずっとやっていたのかも知れない。

仕方なく、古いプリントなんかの入った段ボールの中身を選別してゴミ袋へいれる。

殆どが要らないもののようだな。
もういっそ確認なしで捨てちまえばいいじゃねーか。


「当人たちはどこ行ったんだよ」


徐々に飽きてくるとどうしても不満が出てくる。肝心のイッサとルイの姿が無いのはなぜなんだ。
あいつらの部屋を分けたいからこうなってるというのに。


「二人とも彩治(さいじ)くんの家に行ったわ」

「はぁ?」


彩治とは、双子の保育園時代の同級生だ。
小学生となった今、学校も違うのに未だに仲が良くてよく遊んでいる。

その彩治のねーちゃんが、紗優(さゆ)ちゃん。
俺の中から、ずっと消えてくれない女の子。

途端にギクシャクしてしまって、俺は持っていた紙の束を落としてしまう。


「あー、やべ!」

「ばっかねぇサトル。何やってんのよ!」

慌てて拾い集める。
これ、俺が保育園の時のお便りじゃねーか。

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