存在

~彼との時間~

 ピンポ~ン。

 カチャリ…

 『和(かず)~!お帰り!』

 私は玄関先で彼に巻きつく。

 『おいおい。中に入れてくれよ…。』

 微笑みながら私に優しくキスをする。

 私の一番幸せな時。

 彼のスーツを受け取るとハンガーにかけながら、私はいつも胸がズキンと痛む…。

 綺麗な背広…アイロンの掛かったワイシャツ…。

 奥さんの影が見え隠れする…。

 私のように、昼間ゴロゴロ寝てるようなだらしない女ではないんだろう。

 『和の好きなつまみ作っておいたからね!』

 私は胸のもやもやを吹き消すように、明るく言った。

 『ありがと…愛美の手料理は最高だからなぁ…。』

 微笑みながら彼は言う。

 『飲みながら食べよ!』
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