復讐
幸治は、肩を震わせ泣いた。
気持ちが不安定で、感情をコントロールできなくなっているのだ。

そして、それを見た美帆は、幸治の背中にそっと抱き着いた。

「幸治。大丈夫だよ。きっと大丈夫。幸治が辛くなった時は、私が貴方を助けてあげるから」

「美帆に何が出来るんだよ」

幸治は声を震わせ言った。
そして美帆は、更に幸治に抱き着く腕に力を入れた。

「なんだって出来るよ。私は幸治の為だったら、なんだってする。だから…ねぇ幸治。頑張ろう」

幸治は「ごめん」とだけ言い、そっと美帆の手を解くと、再び布団に潜った。

そして美帆は、無言のまま立ち上がり部屋から出て行った。


部屋に残された幸治は、美帆が出ていったのを確認すると、扉を入ってすぐの壁側にあるテレビラックの引き出しを開け、写真のアルバムを取り出した。

それを、フローリングに座り込み、一枚一枚ゆっくりとめくった。

表紙に『家族』と書いてあるそれは、全てが雪乃と幸治だけの写真だ。

父親なんかがいるはずがない。

産まれる前から、存在しなかったのだから。

当時25歳の雪乃は、未婚のまま子供を宿し、産み、そして死んだ。

幸治は、一枚一枚じっくりと見ると、時折写真に写った母を指でなぞった。
そして、溜息をつき呟いた。

「どうすればいいんだよ」




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