復讐

「してるじゃん。そいつが馬鹿だから、自分からバラしちゃったんでしょ？」

安田は再び幸治の頭を小突いた。

「馬鹿はお前だよ。ようく考えてみろ。もし嫉妬っていうのが本当の理由だったら、奴は嘘をつくはずだ。尾行している事をバレたくない筈だからな。てゆう事はだ、奴は何か他の理由を隠す為に、嫉妬っていう嘘をついたんだ。本当の理由を隠すのに夢中になって、慌ててついた嘘が、もう一つの真実を俺等に教えちまったって事だよ」

「安田さんの言う通りでしょうね」

美帆はそう言うと、なにか考え込むように頬杖をついた。

「ねぇ安田さん」

幸治が言った。

「もしかして、おれ狙われてる？」

「いや、それは分からない。本当の理由が分からないとな」

「そうだよね」

幸治は深く溜息をついた。

「民はよく分かりませんが、坊ちゃんも美帆ちゃんも、十分に気をつけて下さい。もし二人に何かあったら民は…」

民は感極まって泣き出してしまい、先に寝室に戻って行った。

そして安田が言った。

「まぁ、あんまり考えても仕方がねぇよな。それに名前を聞かれたぐらいじゃ、そんなに危険って訳でもなさそうだしな。今日は、お前等ももう寝ろ」

安田にそう言われると、二人は渋々と寝室へ向かった。

そして安田は、耳を澄まし、二人が階段を上りきったのを確認すると、手元に置いてあるビールを飲み干し、部屋の中を歩きまわった。

安田がそれを見つけたのは、部屋の中を捜し始めて３０分が経った頃だった。

コンセントの差し込み口を、一つ一つドライバーを使い開き確認したところ、テレビのすぐ横にある差し込み口から、小型の盗聴器が出てきたのだ。

安田は、クソっと言いそれを床に投げつけると、自分の携帯電話を取り出し、すぐに三井に電話をした。