復讐


国道沿いに並ぶファミリーレストラン。

もう朝日が昇ろうかというような時間、その喫煙席の一角に三井と安田がいた。

安田にいたっては、寝る準備にかかっていた為、スウェットにジャンバーという格好だ。

「幸治君、大丈夫でした?なんだか相当機嫌を損ねてたみたいですけど」

三井が聞いた。
安田は、根本まで吸い尽くした煙草を灰皿に捨て、微笑しながら言った。

「大丈夫だよ。あいつはまだガキなんだ。自分の気に入らない事があると、すぐにへそを曲げやがる。明日になったら綺麗サッパリ忘れてるよ」

「ならいいんですけど」

「そんな心配するな。それよりどうだったんだ?こんな所に呼び出す位だ。なんかやばい事でもあったのか?」

安田はそう言うと、再び煙草をくわえ火を着けた。
安田を呼び出したのは三井だ。

松岡の尾行を終えた後、真っ直ぐに幸治を自宅へ送り届けた後、三井は一人で国道沿いのファミリーレストランに入った。

幸治には気付かれたくなかった為、敢えて先にファミリーレストランに行き、電話で安田を呼び出したのだ。

安田が来る前は、わざと禁煙席に座っていたのだが、安田が到着するなり煙草に火を着けてしまった為、慌てて喫煙席に移してもらった。



三井は、向かいに座る安田に見せるようにして、テーブルの上にノートパソコンを置いた。

ノートパソコンには、カード型のアンテナが挿されていて、インターネットに繋がれている。

そしてその画面には、一枚の画像が大きく映し出されていた。

三井は、急にそんなものを見せられ、意味が分からず困惑している安田を見て、ニヤリと笑みをこぼした。

「安田さん。そこに映っている人物をご存じですか?」

「そりゃあなぁ」

「では彼の名前は?」

「松岡幸蔵だろ?まさかこいつが?」

三井は指をパチンと鳴らした。

「ご明答。次は、そのまま画面を下にスクロールしてみて下さい」

「スクロール?なんだよそれ」

安田は眉間に皺を寄せ三井を睨んだ。

三井は「貸して下さい」と面倒臭そうに言い、安田からそれを取り上げた。

そして今度は、松岡幸蔵のプロフィールを安田に見せた。
< 35 / 52 >

この作品をシェア

pagetop