鎖。*奈落の底へ落としてあげる。*
――李依菜様は兄様と別れないで。
これからは“私”を犠牲にしてください。――

そう言った瞬間、一瞬だけこっちを向いて微笑んだ気がした。

(気のせいだよね……)

李依菜は心の中で小さく溜め息を吐いた。

「……でも、未来は一つ間違えてるんじゃない?
未来は“あの女の残した形見”を捨ててないじゃない。
それはどう説明するの?」

「游、口を慎みなさい。
あなたは“後妻”という立場をお忘れ?
私は雛森家の次期後継者よ。
そこらへんのあなた達みたいな凡人と一緒にしないで。」

――バシッ

游は目を見開き、涙目で未来の頬を打った。

「どうして、私の言うことを聞いてくれないの?!」

――バシッ

今度は未来が游を打った。

「なぜ私が游の言うことを聞かなければならない?
私は母と自分の信じた人以外の言うことは聞かない。
聞く気もない。」

「だから金持ちは嫌い。
私達凡人のことを何一つ知ろうとしない!」

游は今にも泣きそうだった。
だけど未来はお構いなしに話す。
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