甘い愛で縛りつけて
確かに、生徒が寝ていたら、桜田先生と有坂さんが出て行った後でも、こんな口調で話すハズがないか。
恭ちゃんは私とふたりきりの時以外は昔の恭ちゃんみたいな口調で話すから。
ピシャってドアを閉めると同時に、昼休み終了のチャイムが鳴る。
デスクに置いたノートパソコンの前に座る恭ちゃんに近づくと、「そこ座れ」って、顎で命令されて。
言われた通り、恭ちゃんのデスクの近くにある長椅子に腰を下ろした。
「何やってるの?」
難しい顔をしてパソコンに向かっているから聞くと、恭ちゃんは作業を続けながら答える。
「この学校、月に一度保健だより発行してるらしいから、過去のフォーマットがないか探してんだけど」
「なさそうなの?」
「なんか、去年のプリント見る限りどうやら手書きっぽいんだよなー。
おまえ、前の先生がどうやって作ってたか知ってるか?」
「知らないけど……でも、多分、手書きだったかも。
確か最初の頃は字も手書きだったんだけど、それを見た他の先生がせめてって文字だけパソコンで清書してるって聞いた事あるよ」
「そうなると一から作らないとか……。めんどくせーな。
つーかこれ、需要あんのか? 配るわけじゃねーんだろ?」