トマッタ時計

距離

それからというものの私と内藤くんは相変わらずだった。

そんな時に限って・・・。

「好きです!付き合ってください!」

給食時間にいきなり一人の男の子が告白してきた。

体育館裏に呼び出された時からなんとなくそうかなぁとは思っていたものの・・・。

まさか本当に告られるとは・・・。

「あの、気持ちは嬉しいです。でも私好きな人がいるので気持ちには答えられません。」

「俺、全然気にしないから!」

ん?いや、そういうことを言っているのではなくて・・・。

「いや、その、好きな人がいるからごめんなさい」

「うん。だから気にしないよ」

「いや、だから・・・」

「内藤のことが好きなんでしょ?」

「え・・・?」

今、なんて・・・。

「確かに内藤は男の俺から見てもいいやつだと思うし、結構モテるし。でも、俺は蒼井の事本当に好きなんだ。俺は蒼井が内藤のこと好きだって知ってて告白した。だからそれなりの覚悟はあるつもりだ。たとえ蒼井の心の中に内藤がいたとしても俺はここでおとなしく身を引こうとは思わない。蒼井、少しの時間でいいから俺と付き合ってくれないか?」

この言葉に私は強く胸を打たれた。

そして、この人と付き合ったら内藤くんのことを忘れられるかもしれない。

そう思ってしまったんだ。

「本当に・・・いいの・・・?」

私は俯いたまま呟いた。

「いいよ」

その言葉と同時に顔を上げると、彼はとても優しい笑顔を私に向けてくれた。

「・・・お願いします」

そう言って頭を下げた。

「よっしゃぁ!!」

すると彼はいきなり大声を出してガッツポーズをしていた。

その光景に自然と顔が綻ぶ。

私がクスクスと笑っていると、暖かいものに包まれた。

それが彼だということが分かるのに時間はかからなかった。

「ありがとう・・・」

涙声で呟いた彼がなぜか凄く可愛く感じられて・・・。

私は彼の背中に手を回して抱きしめた。
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