【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
夏の暑さに溶け込む蝉の鳴き声は、ボールとバッシュと飛び交う声に、掻き消されている。



しかし、一人の男の影に、蝉の鳴き声は降り注いでいた。



「あっ!しまった!」



ディフェンスの番になり、部員のボールをスティールしたら、開いていた体育祭のドアの方へ一直線に飛ぶ。



けれどそれは、色白の肌を持つ色素の薄い男に拾われた。



「あ…すみません」



品の良さげな男は、色素の薄い、俺と同じような天然の茶髪の、俺と正反対のサラサラストレートのミディアムショートの髪の毛を揺らしこちらを見上げる。



育ちの良さそうな吊り上がった目と、横幅が長く薄い唇、俺から見て唇下の左、この人からすれば右の黒子が印象的な、灰色とピンクのチェックのサマーベストを身に纏った、他校の人。



こんな制服熊本市内で見たことないけど、どこの人だろう。



なんて思っていると、その男が口を開く。



「…随分大きくならはったね、椿」



…………えっと、え?



「ど…………どちら様?」



俺の記憶にこんな上品な方、いたっけ?ってか、訛りが熊本弁と違う。関西の方の訛りっぽい。
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