【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
男は、俺の返事に手からボールをするり、と落とす。



「えっと、あのー…」



ボールを拾い上げ男に近寄ると、男は、その涼しげな目に涙を溜めた。



え!?泣く要素、今の流れにあった?



困惑する俺の頬を、男が勢い良く両手で包む。



ちょっと、何この状況!イテテテ、案外力強いマジ勘弁。



ポロポロ、と涙を流す顔も上品というか、中性的というか。



行雲先輩とはタイプの違う、女顔。例えるなら、歌舞伎の女形みたいな。



「僕を覚えてへんのどすか?あないに一緒に遊んやんに!」



良く分かんないけど、何で覚えてないのって言ってる系?



「何をしている、小鳥遊」



「や…俺も良く分かんないんですけど。ボール飛んだから拾いに来たら急に…」



隣のコートで2対2対1をやっていた秀吉キャプテンがこちらへ駆け寄り、俺と男を見比べ、眉間に皺を寄せる。



そんな顔されても、何がなんだか。
< 312 / 521 >

この作品をシェア

pagetop