【完】シューティング★スター~バスケ、青春、熱い夏~
俺達に用意されたのは大人数で宴会出来る広間と、先生、由貴先輩の女用の和室。



男15人はこの大部屋で皆で寝るみたいだ。まあ、それでも余裕で広いけど。



このシーズンは、やっぱり夏休みの客で部屋が埋まってて、しかも、京都の老舗旅館だから、忙しいのなんて当たり前の中、無料で提供してくれたんだ、感謝だな。



「失礼します」



そこに皆で荷物を置いていると、襖が開き、槐にそっくりの美しい女性が、三つ指を着いていた。



「遠路はるばるおいでやす。ウチん都合で二部屋しかこしらえれなくて、えろうすんまへんなぁ」



この女性こそ、この旅館の女将さんで、まあつまり…俺の、実の母親ってことになる。



記憶なんてないのに、槐に頭を撫でられた時みたいに、じわり、と懐かしさが込み上げた。



「いえ、すみません。無料でこのような素晴らしい場所を提供して頂けて、有り難く思っています」



水高を代表して、秀吉キャプテンが丁寧に挨拶を返し、皆で一礼。



「うちはここん女将の、時雨綾那(しぐれ あやな)どす。どないぞ、ささやかいなおもてなししか出来まへんが、ゆっくりしいやいっておくれやす」



女将さんが挨拶をし、顔をあげた瞬間、目が合った。



その瞳は、切なさと、愛に染まる。



「ほんなら……また」



その場からなんとも言えない優しい仕草で去っていく背中を、俺は動けずに見送る。
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