窒息寸前、1秒
「何で、由梨子がここにいるんだ?」
私が答えるより先に、先輩が言う。
好きな人に向けるような問い方ではない。
冷たい雰囲気の。
「ふふっ。ご一緒しても?」
「だから、」
そんな先輩にも、動じず笑って、しかも答えない由梨子さん。
先輩は少し苛立ったように言うけど、由梨子さんはそれすらふわりと笑ってかわした。
「座ってから話しましょうよ。ね、隆弘。」
「あぁ。」
それまで何も言わなかった隆弘は、頷いて先輩の隣に座った。
「あら、花那ちゃんの隣に座れば良いのに。」
ひやかすように笑って言う由梨子さんだけど、なんだか意味ありげな言い方。
「由梨子。」
咎めるような声で先輩が言う。
「そんなに、怒らないでよ。」
由梨子さんは、全然気にしていないみたいで軽く言う。
先輩はなんだかピリピリしているし、由梨子さんはおちょくるような態度を取っているし、隆弘は黙ったままだし。
訳がわからくて、頭がこんがらがりそう。
そもそも、由梨子さんは何で堂々と私たちの前に登場したのだろう。
普通、私たちを見ても隠れるよね。
どういうつもりなのか。
今日のことは、隆弘からは何も聞いていない。
全部先輩から聞いたけど。
由梨子さんも、隆弘も私たちが何も知らないと思っているのかな。