窒息寸前、1秒
「孝輔と花那ちゃんこそ、どうしたの?」
由梨子さんは、急に真剣な顔をして聞いてくる。
「たまたま会って、せっかくだからお茶でもと、俺が誘った。」
「たまたま、ね。」
先輩の完璧な嘘に、愉しそうに笑う由梨子さん。
そうだよね。
由梨子さんと隆弘は、何も知らないから、私と先輩という組み合わせは不思議に思うよね。
「由梨子たちは何してるんだ?」
「私たちは、買い物に。」
「そうか。」
言うつもりはないんだね。
誕生日にふたりで出掛けていましたって。
まぁ、言えるわけないよね。
それに、私は何も知らないと思われているだろうし。
「それでね、孝輔と花那ちゃんを私たまたま見ちゃって。北口の広場で。」
「え…。」
北口の広場って。
先輩が急に抱き締めてきた場所。
もしかして。
由梨子さんと、隆弘に見られた…?