イジワルな彼の甘い罠



再度投げかけられた問いに、頭の中で必死に答えを探す。



無難に、優しい人とか誠実な人とか適当なことを言っておこう。



好みの人、好きな人

『無難に答えよう』、そう思うのに、その言葉に思い浮かぶのは、ほらまたその姿ひとつ。



『理想と現実は違う』



それなら、言葉にするくらいは、許されるよね。



「……面倒臭がりで、口が悪い人」

「へ?」



私の、好きな人。



「しょっちゅう無精髭生やしたままで、スーツが大嫌いで、煙草ばっかり吸ってラーメンばっかり食べて」



だらしない身なりで、やる気なんて感じられない。

おまけに、こっちなんてろくに向いてくれやしない。



「いつも仕事のことばっかりで、用がある時にしか連絡くれなくて……用が済んだらすぐ帰らせるような奴」



それでも時々、熱い瞳で見つめる。

全てがどうでもよくなってしまうような、深く甘いキスをするんだ。


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