イジワルな彼の甘い罠
細くて背の高い、茶色の短髪の男の顔は見えない。
けれど慣れたようにその体に触れる、その光景ひとつで、最近のあいつへの不信感が爆発するのを感じた。
……そういうことかよ。
『せいぜいあとで男といる彼女を目撃!とかならなければいいけど』
青田の言葉が、今更ながら思い出される。
なんでだよ
なんで今更、
7年も一緒にいて、ようやく気持ちが伝わって、こっちは結婚の話をどう切り出そうか、そればっか考えてるのに。
浮気?
真昼間から他の男と寄り添って、俺には触られることすら拒んだのに。
「っ……」
人混みに消えて行くふたりに、どうしようもない気持ちをぶつけるように、俺はその場にあったゴミ箱を思い切り蹴り飛ばした。
散らばるゴミ
驚く周囲の視線
……帰るか。
逃げ場のない、ふたりの部屋へ