イジワルな彼の甘い罠




時計の針が、夜23時を指す頃。

ひとり、またひとりと社員たちが席を立つ小さなフロア。気づけば電気のついたままのその部屋には、無言で入力作業をする私と八代くんの姿だけがあった。



「……すごい量だね、本当に」

「そうですね……」



頑張って作業を続けているものの、まだ終わりの見えない膨大な仕事量にさすがに疲れが出てきているようで、彼からもいつもの元気は感じられない。



「ちょっと休憩ー、コーヒー飲む!」

「あ、じゃあ俺淹れます」

「本当?ありがと」



八代くんはそう席を立ち、オフィスの端の台の上で手早くインスタントのコーヒーを淹れる。


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