イジワルな彼の甘い罠



「唯川さんは確か、砂糖半分のミルク多めですよね」

「よく知ってるね」

「変わった入れ方する人だと思って、覚えちゃいました」



あははと笑い、手渡されるカップからはふわりとコーヒーのいい匂いが香る。

受け取りひと口飲むと、感じる温かさとコーヒーの味にほっと安心感がこみ上げた。



「……あの、」

「んー?」

「唯川さんって……彼氏とか、いないんですか?」



いきなり、なに?

あまりにも唐突なその質問にきょとんとしながらも、あまり深くは考えずに鼻で笑う。



「あー……うん、見ての通り寂しい独り身」

「いや!全然見ての通りじゃないですよ!俺絶対彼氏いると思ってましたもん!」

「あはは、八代くんは口が上手いなー」

「本当ですよー!」



どうせおだてだろうけど……必死に力説するところが、ちょっとかわいい。

笑って流そうとする私に対し、その顔は不意に真剣なものとなる。


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