イジワルな彼の甘い罠
「……なにしてんの」
「この前撮影した分のデータのチェック」
「データ、ねぇ……」
薄暗い部屋で痛いほど目に飛び込んでくる、画面の明かり。覗き込めばそこには、下着姿の女の子の写真が写っている。
やるだけやって、終わったら即仕事って……。
「……ムードのない男」
「うるせーな」
小さく呟き背中を向けた私に、ふう、と吐き出される煙草の煙。苦い匂いが、髪に絡みつく。
「ムードもクソもあるかよ、俺とお前の関係に」
……そう、確かにそうだ。
甘いムードも、愛を語る時間も、なにひとつ必要なんてない。
だって私たちは、恋人ではないから。