イジワルな彼の甘い罠
「東京本社から来ました、唯川です」
「八代です!本日から一週間……」
「あーうん!挨拶とかええから!早よ仕事始めて!」
ところがオフィスに入って早々、そこで待ち受けていたのは、『ようこそ』という歓迎ムードには程遠い、殺伐としたムードだった。
「へ?あの、私たちまだ着いて3分くらいなんですけど……」
「唯川さんはこっち!八代さんはこっちで!仕事山積みやから気合い入れて頑張ってな!」
フロアを仕切る主任だろうか、課長だろうか。目の前の人の名前も立場すらも紹介されぬまま、私と八代くんはそれぞれ用意されたデスクに座らされる。
そして目の前にドカッ!と積み上げられたのは、山のような書類やファイル、バインダー……。
フロア内を見渡しても、聞いていた通り、人がいない。けれど仕事は山のようにあり、今いる数少ない社員も虚ろな目をしてパソコンに向かい、今にも倒れそうだ。
これじゃあすぐ来てと言われるわけだ……。
そう納得しながら、私も早速仕事を始めた。
その日から一週間、お客様扱いやよそ者扱いされるほどの暇すらもなく……朝から晩まで仕事に追われ、夜はビジネスホテル。
ひたすらその繰り返しで、仕事仕事仕事で毎日は過ぎて行った。