いとしいこどもたちに祝福を【前編】
08 颯然たる呼声と既視

「しつこい男は嫌われるよ?」

「晴、本当に大丈夫だった?」

目を覚ました陸は、追手として現れた少女の話を聞いた途端、心底心配げな表情でそう訊ねてきた。

「う、うん。夕夏が一緒だったし賢夜もすぐ来てくれたから…」

晴海のじっと眼を覗き込んで暫く静止した後、陸は大きな溜め息を落とした。

「そっか…なら良かった」

「…あの子、随分と君にご執心な様子だったけど。陸、あの子と月虹で何かあったの?」

「いや……具体的に何かあった訳じゃないけど…あいつ――雪乃(ゆきの)には、前から妙に気に入られてて。俺と接した相手に誰彼構わず嫉妬するから、晴が雪乃に何かされたんじゃないかって」

「そ…そうなんだ」

伏し目がちにもう一度息をついた陸へ、晴海は精一杯意外そうな相槌を打った。

実は察しの通り、思いぅ切り嫉妬され平手打ちや電撃を喰らわせられた、とは到底告げられない。

「君たちお互い厄介なのに好かれてるなあ…秦の馬鹿も相当うざいけど、あの雪乃って子もなかなか強烈だよね」

夕夏が呆れ果てたように苦笑いを浮かべると、陸もつられて困ったように肩を竦めた。

「その馬鹿だが…さっき近くで見掛けたぞ。晴海、気を付けろ」

「え…ほ、本当?」

当の本人は上手く隠れてるつもりらしいがな、と賢夜は珍しく嘲るような笑みを浮かべた。

「あの馬鹿、今日も来てるんだ?他にやることないのかな、気色悪い」

夕夏と賢夜は秦と幼馴染みらしいが、秦に対する感情は明らかに好意的ではない。

まあ、それは他の炎夏の住民たちにも当て嵌まることだが――この姉弟は特にその傾向が強いのだ。
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