いとしいこどもたちに祝福を【前編】
14 身心の疑念と帰趨

「……逢えるのに逢わないと、きっと後悔するから」

「…っ陸!今度こそ間違いない、陸だろう?!僕がお前を見誤る筈がない…僕はずっと、お前を捜していたんだ!」

京はまるで、そうしないと陸が消えてしまうかのように、性急にその頬へと両手を伸ばした。

陸は当惑した表情で押し黙ったまま、京の姿をじっと見つめている。

「そんな、まさか…今度は本当の陸様!?」

「陸…っ!お前なら僕が誰なのか分かるだろうっ?お願いだ、僕のことを呼んでくれ…!」

「っ待って、京さん!」

はっとして慌てて制止に入ると、陸と京は互いにびくりと肩を震わせた。

「京さんっ、彼は…記憶がないんです。此処に居合わせたのも偶然でっ…」

「記憶、が?」

すると京は一瞬困惑したような表情を見せたものの、すぐ落ち着きを取り戻した。

「そうか…すまない、君を驚かせてしまって。唐突に話を進め過ぎたね」

京は少し悲しげに笑うと、陸の傍から数歩距離を置いた。

――取り敢えず京がすぐ冷静になってくれて良かった。

それに、先程から陸の様子がおかしい気がする。

京に話し掛けられても返答どころか、殆ど反応すら示さない。

自身と似ている容貌の京を目の当たりにして、戸惑っているだけとはどうも思えない。

「…晴海。この人は?」

「ああ。すみません、申し遅れてしまって。僕は京…霊奈、京といいます」
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