いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「陸…」

「怖いんだ、晴……俺にも慶夜のように帰りを待ってくれる家族がいるのか。俺に洗脳が必要なかったのは、もしかして……俺には…俺は、本当に……」

陸は蹲るように視線を落とすと、自身の両肩を掻き抱いた。

能力者や霊媒師のことで、複雑なことや難しいことは解らない。

こんなときに、陸にどんな言葉を掛けるのが一番良いのか判らない。

けれど――せめて今の自分が陸に言えることを、伝えておきたかった。

「それでも私は…何の根拠もないけど…陸にも、陸のことを心配してる家族がいると思うよ。髪や眼の色だって、偽物だったらきっとこんなに綺麗だなんて思わないもの。きっと陸のお父さんやお母さんが、同じ髪や眼の色をしてるんじゃないかな」

すると陸は俯いていた顔をゆっくりと上げて、泣き出しそうな顔で笑って見せた。

「だとしたら、俺は……、家族に逢いたいな…」

「怪我がもう少し良くなったら、春雷に行ってみよう?一緒に陸の家族を探そうよ」

良かった、陸が笑ってくれた。

「…うん。有難う、晴」

漸く見せてくれるようになった笑顔はまだぎこちないけれど、陸が以前よりも柔らかい表情を浮かべてくれるようになって嬉しかった。

「――…晴には、逢いたい人とか…いる?」

「え…私?」

「ずっと、訊きそびれてたんだ。晴の家の居間に飾ってある写真の人のこと…あの人、晴のお父さんだろ?」

思わぬことを訊ねられ少し面食らったが、写真のことを指されてその言葉の意図を理解した。
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