赤ずきんは狼と恋に落ちる
「伝えよう」
そうさっきタクシーの中で決心を固めていたのに。
家に戻って、いざと云う時に躊躇する私。
何も変わっちゃいない。
「本当に私って意気地なし……」
どうしても自分の部屋から出て、リビングに居る千景さんのところへ行くのにも勇気がいる。
さっきの決意はどうしたんだ、私。
「伝える」って決めたのは私でしょ。
確かに、急に言われて困るかも……いや、困るしかないと思うけれど。
あんな風に、好きでもない女を庇うためにキスするのは、辛いよね……。
だから、言わなきゃ。
「行こう……」
手を胸元に当て、大きく深呼吸する。
落ち着いて、落ち着いて。
結果とか、気にしなくていいけど……。
いや、やっぱり少しは気にしよう。
カチャリと部屋のドアノブを回す。
少しずつ、少しずつ開いていくドア。
そろりとドアを閉め、リビングへ向かう。
「あ、りこさん」
台所から出てきた千景さんに、タイミング良く顔を合わせてしまった。