赤ずきんは狼と恋に落ちる
ふんわりと、羽のように軽いキス。
唇の上に降ってくるそれは、今まで味わったことがないような、甘美な心地好さで。
そっと瞳を閉じて、その甘美な心地に浸ろうとする。
たった数秒で離れていく唇を見つめていると、
「まだ足らんわ」
と、千景さんは少しだけ意地悪く笑った。
ゆるりと細めた目には、いつもの優しさと、
今日、やっと見ることができた、彼の艶っぽい色が見えた気がした。
その途端に、忘れかけていた恥ずかしさが一度に溢れ出し、視線を下へと向かせた。
「りこ、こっち見てて」
優しく頬を撫で、顎に手をかけると、私の顔は、千景さんの鼻先にまで近付けられた。
目元と口元を緩め、「可愛い」と言うと、さっきよりも深く、唇を押し当てた。
固く結んだ唇は、何の意味もなさず。
息が苦しいのか、自分から求めていたのかも分からずに、知らないうちに、自分から口を小さく開けていた。
千景さんは唇を啄むのを止め、舌舐めずりをすると、何も言わずにキスをする。
少しだけ強引に、肩を抱き寄せると、温かい舌が入ってきた。
逃げようとしても、それを許してはくれず、あっさりと捕まってしまった私を絡めとる。
ピチャリと生々しい音が聴こえる度、口を開けてしまい、深く、甘く、溺れていく。
「……っは、ぁ」
やっと離してくれた唇と唇の間には、細い糸がツッ、と繋がっていた。
それを親指で掬い取り、ついでにと、私の唇の端からだらしなく垂れている糸も掬ってペロリと舐められる。