赤ずきんは狼と恋に落ちる
細い道を通り抜け、真っ直ぐ進むと、茶色く古ぼけたドアが見えてくる。
もう一度、平気だと自分に言い聞かせ、ドアを開ける手に力を込める。
ギィ、と響く音と、聴き慣れたベルの音。
開けて真っ先に目にしたのは、グラスを磨いている千景さんの姿。
「りこさん」
私に気付くと、磨いていたグラスを直し、カウンター席に座るよう促す。
私も頷くだけで、敢えて何も言わない。
「……何か、飲まへん?」
黙ったままの私に、そっとメニューを渡すと、向かい側に座る。
こんなに近いのに、距離は空いたまま。
曖昧さを求めすぎたことを、本当に後悔する。
このまま私が黙っていても、何も進まない。
自分の性格、考え方には、既に後悔しているはずだ。
今さら後悔することが増えても、平気。
「千景さん、」