赤ずきんは狼と恋に落ちる
「妹に、私たちが同居してること、言ってみます」
唇をぎゅっと結び、千景さんの方を見る。
驚いている彼は、目を見開いてこちらを見ている。
「ええん?」
「はい。……ずっと隠してても、お互い、気になりますし。
コソコソするよりも、きちんと言った方が妹にも良いと思うんです
……だから、」
出て行くなら、出て行っていいですよ。
そんなこと、言える訳ない。
空いてしまった距離をどうにかして縮ませてからじゃないと、そんなこと、言えない。
言葉が出なくなってしまった私に、千景さんは、そっと頭を撫でてくれる。
「それ、俺も今考えてたんや」
ゆっくりと立ち上がると、小さなグラスを取り出し、戸棚の中を覗き込む。
「出て行くのも考えたんやけどな」
千景さんは、一つ息を吐くと、戸棚から取り出した、赤い液体の入っている瓶をカウンターに置く。
トクトクと小さなグラスに注がれる、赤い液体から、ふわりと苺の香りが広がっていく。
「でも、俺は今のままじゃ、出て行きたくない」