赤ずきんは狼と恋に落ちる
「千景さん……!」
痛いくらいに繋がれた手がピクリと動き、黙って足を止める。
「ごめん…、なさい……!こんな時に……」
情けなくて、惨めで、
恥ずかしい。
千景さんには、こんな姿を見られてばかりだ。
私が流す涙は、いつも安っぽい涙だなんて思われているんだろう。
元彼に、未練たっぷりの重たい女なんて思われているんだろう。
もう嫌。
恥ずかしくてたまらない。
千景さんに、嫌われたくない。
「すみませ……っ、すぐ、泣き止みますから……」
手の甲で必死に涙を拭い、鼻をすする。
喉の奥から出てくるしゃくり声が一向に止まらないので、歯で下唇を強く噛む。
さっき、キスされた唇を、自分の歯で強く強く噛む。
私にしてくれたあの優しいキスは、私を庇うためだけのキス。
その優しさに、いつまでもいつまでも甘えたくなる。
こんなんじゃ、ダメだ。
何で私って、こうなんだろう。