はじまりの日
「さっちゃんが産まれてすぐに、旦那さんはガンで亡くなったらしいんだ。その時雪さん自身が、まだ21歳だったんだぜ」


そして今日まで、女手一つでさっちゃんを育てて来たのだから、並大抵の苦労ではない。


条件の良い職場が見つかったっていうのが不幸中の幸いだったんだろうけど。


雪さんは短大卒業と同時に結婚して家庭に入ってしまったので、就職はしなかった。


しかし、旦那さんが亡くなってしまったので勤めに出なくてはいけなくなり、どこか良い所はないかとハローワークに相談に行ったところ、郵便局を紹介してくれたらしい。


「郵便局のバイト」と聞くと配達か郵便物の仕分けが真っ先に思い浮かぶけど(実際に俺は夕方の仕分け要員として採用された)業務を進める上では当然事務的な処理も必要になって来る訳で、しかもそれが中々の仕事量だったりするので職員だけでは手が足りず、どの局でもたいていバイトの事務員さんを雇っている。


ただ、一度採用されたらほとんどの人は長く勤める事になるのでそんなに頻繁に求人が出る事はなく、その事実を知る人はあまり多くないだろう。
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