はじまりの日
「良いって、何が?」


「昔からムカつくくらいモテまくりで、女の子なんか選り取りみどりだったじゃん。よりにもよって、そんな相手選ばなくても」


「「そんな相手」とは何だよ。失礼な奴だな」


俺はムッとしながら背後のカラーボックスの上に飾ってある写真立てを手に取り、徹に差し出した。


言わずもがなでそこには、俺の愛しい女性の写真が挟んである。


「……これが婚約者の、雪さん?」


「そう」


「えらい美人だな」


「だろ?」


驚いたような、そしてちょっぴり悔しそうな、微妙な表情を浮かべる徹に得意気に答えてから、俺は続けた。


「で、彼女の隣にいるのが、1人娘のさっちゃん。幸せの【幸】な」


「へぇ~。ずいぶんシンプルな名前だな」


予想はしていたが、徹はそこに食いついた。


「幸せな人生を歩んでもらいたいから、男でも女でも、その名前にしようって決めてたんだってさ。……亡くなった旦那さんと」


「……そっか」
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