だんご虫ヒーロー。
なんで……
なんでこんなことになってるの?
「…李!?」
その場に座り込んでしまった。
綾女は慌てて私の体を支えてくれた。
だってさっきまであんなに顔色が良かったのに、今は別人のよう。
目の前の光景が事実なのに、信じることが出来ない。
綾女に支えられながら、ベッドの横に行く。
そして床に膝をついて、彼方の顔を見つめる。
声が出ない。
いつもの調子で"彼方"って呼べない。
「…篠山さん。
危篤状態は、意識ははっきりしてないけど、耳はよく聞こえるんです。
だから原崎さんの名前を耳元で呼んであげてください」
根元さんはそれだけ言うと、病室を出ていった。
危篤状態?
そんなんじゃないんでしょ?
これは彼方の演技で、私に早く帰って来て欲しかったからこうしてるんでしょ?
ただ涙しか流すことが出来ない私に、反対側にいたおばさんが私の頭を撫でた。
いきなりのことに驚いて、おばさんを見上げる。
「…彼方はいつもこうして李ちゃんに触れてもらうのが好きなんだって言ってたのよ。
だから見てるだけじゃなくて、彼方に触れてやってくれる?」
おばさんは涙を流しながら、私に微笑みかける。
隣のおじさんを見ると、おじさんも涙を流しながら微笑んで頷いた。