キケンな花嫁修行〜結婚相手が二人!?〜四ノ宮蓮編
あっという間にネクタイを締め出勤用の格好になった蓮さんが、一人で羞恥心に悶える私に言う。
「そんなに見たいんなら……仕事から帰ったらいくらでも見せてやる」
「……え?」
「……バカ、聞き返すな。……もう時間だ。今日は急ぎだから見送りはいい。じゃあな」
「あ……いってらっしゃい!!」
風のように去った蓮さん。
扉がパタンと閉まる音を聞くと気持ちが落ち着いてきて、大切なことを尋ねるのを忘れたことに気がついた。
どうして私を抱き締めて眠っていたんですか――――って。
でも……
「きっと、寝ぼけていただけ、よね……?」
昨夜、涙を流した私を面倒臭そうな目で見ていたし。
私のことなんて、本当に政略結婚の相手としか思っていないだろうし。
……ああ、なんだか落ち込んできた。
私は首をぶんぶん横に振り、頬を両手でパチンと叩いた。
今日も、何か蓮さんを癒せるようなことをやろう。
やっぱり私は形だけでなく、彼の本物の花嫁になりたいから……