侍先生!

侍先生!

「たとえ、最後の一人になったとしても、わしにには従うまい。 全員殺せ!」


「信長様! それはあまりにもひどすぎます!」


「やかましい! 老若男女問わずだ、分かったか!!」


「…またやってんの?」


皐月があきれ顔で私たちをみてくる。
いつもの事だ。


はやいもので、正月も終わって、新学期の事。
私と先生は学校で会うなり信長ごっこを始めた。


「あんた達、つきあってるんだよね?」


「うん、そうだよ?」


「まえと全然変わってないじゃない」


「いいの! 信長ごっこしてるときが一番楽しいんだから」


笑顔でそう言うと、皐月はやれやれといった顔で去っていった。


私たちは人気の多い廊下を避けて、資料室へ向かった。


「やっぱ、一番盛り上がるのが本能寺の変だよね、先生!」


「そうだな、あのシーンはテレビでも本でも自分でやってても身震いする」


「かっこいいなー、やっぱ信長様は。 吉乃になりたい」


私がそう呟くと、侍先生は、ケラケラと笑った。
< 222 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop