やさしい手のひら・中編【完結】
私は香水のことが頭から離れずにいた

健太に限ってそんなこと・・・と否定しているのに不安が膨れ上がっていた

「具合悪いのか?」

「えっ?」

「何考えてる?」

言えるはずがなく

「何も考えてないよ」

「いつもの亜美じゃない」

何に気付いたの?赤ちゃんのこと?香水のこと?

私はいろんなことが重なったせいか悲しくなってしまい、涙が零れだした

「どうしたんだよ?」

手で顔を覆って私は泣いてしまっていた

自分の思いが通じないもどかしさと一人で産むと決めた不安、そして香水のこと。どれも健太に言えない苦しさでいっぱいだった

「ちゃんと言ってくれないとわからないんだぞ」

私の腕を引っ張り、私を抱き締めた

私は健太の胸に顔を伏せ、涙を流した

泣いて健太に届かない思いをぶつけたんだ

その間ずっと頭を撫でてくれていた。優しく、私を慰めるように・・・

「来週から会えなくなるんだ・・・」

私の耳元で健太は囁いた

私は声が出ず、ただ首を縦に何度も振ることしか出来なかった

由里から聞いていたのでわかっていたことだった

「年末はどうしても忙しいから、暇があれば会いに来るし、電話もするし・・・」

「無理に来なくてもいいよ。体壊したら困るし・・・」

「昨日も電話しようと思ったけど抜け出せなくて・・・ごめん」

気持ちが不安定のせいか本当なのか疑っている自分がいた

またさっきの匂いを思い出してしまっていた
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