やさしい手のひら・中編【完結】
「見たくなかった…」

私は泣きながら下を向いていた。涙がたくさん溢れ出て地面に染みを作っていた

新くんが自分の胸に私の頭を付け

「辛かったな」

そう言ってずっと頭を撫でてくれた。それが私には嬉しかったんだ…

人に優しくされるだけで、慰めてもらうだけで自分の辛さが和らぐ

同情だとしても、今の私には誰かが傍にいてくれるだけで、あの時のことを少しでも忘れられたんだ

「健太の所行く?」

「え…嫌だ、行きたくない」

「何があったのか聞いてないんだろ?」

「う…ん」

「だったら余計行かなきゃだめだろ」

そうだけど…今は行きたくない。だってまだいるかもしれない…

「今は会いたくない」

新くんは少しだけ間をおいて

「わかった」

そう言って私の頭をポンポンと叩き

「行こうか?」

「どこに?」

「俺んち」

新くんは私の背中を押してくれた

そして新くんの車に乗って東京湾を後にした

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