やさしい手のひら・中編【完結】
「亜美ちゃん!きれいねー」

田村さんが私の所まで走ってきて、ベールを持ってくれた

「川崎くんが見たら、惚れ直すわね」

私の耳元で小さな声でコソッと言った

「そんなことないです」

「本当は川崎くんと本番の時に着たかったよね。仕事だと思って我慢してね」

田村さんは片手を顔の前に出し、「ごめんね」と謝っていた

どうにかセットの前まで来て、私は汚してしまっていないか、スカートを見ていた

「馬子にも衣装ってやつだな」

隣に来た新くんがまた私をバカにした。私は仕事以外関わりたくなかったので、気にせず無視していた

「無視してんだ?」

何を言われても目も見ず、顔も見ずでいた

「はい、撮影します」

そう言われてみんな真剣な顔になった

ブーケを持たされ、それを胸の位置に持って行き、

「亜美ちゃん、笑ってね」

笑えと言われても、なかなか自分でうまく笑えず緊張だけが私を襲う

「おい、こら」

新くんに「おい、こら」と呼ばれて、それがまた私は気に食わなくて

「何よ」

「凄く似合ってるよ」

いきなり、さっきとまったく違う態度で私に言ってきたから、私も恥ずかしくなり、頬を赤くした

「俺の動きに合わせて」

私は必死に新くんの動きに合わせた

不思議と新くんと息が合い、思うように動けて私は「よかったよ」とカメラマンにもスタッフにも言われ、褒められた

「亜美ちゃん、今日はよかったね。いい物が撮れたみたいよ」

「ほんとですか?」

「あとで撮ったの見てみて」

「はい」

緊張が解けたのは新くんのお陰だった。新くんがカチカチの私を和ませてくれた

着替室に行く途中、ロビーで携帯を見ている新くんがいて、私はお礼を言おうと思って近づいた
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