Murder a sponsor.
「……ありがとう」


 琴音が小さな声でお礼を言ったかと思いきや、それを最後に何も聴こえなくなった。

 周りからは、見張りではない人達の寝息が聴こえ始める。

 俺も次第にまぶたが重くなっていくのが分かって、そのままゆっくりと目を閉じた。


●●●


 彼女――琴音は、いつも笑っていた。

 嬉しい時や楽しい時はもちろんのこと、自分がつらい時や苦しい時も、周りの者に心配をかけぬようにか……つねに笑っていた。

 俺がそれに気が付いたのは、とある休み時間のことだった。

 授業が始まる間近、自分の教室に戻ろうと女子トイレの前を通った瞬間……。


「白鳥さん?いい加減に死んでくれない?目障りなのよっ!!!」


 聞き覚えのある声が、琴音に暴言を吐いていた。

 結論から言うと、琴音は同じクラスの女子生徒からいじめられていた。

 その瞬間、情けないことに、俺は初めていつも琴音が笑顔を浮かべている理由に気付く。


「真人くんに迷惑をかけちゃいけないって思っていたのに、バレちゃったな」


 そう言った琴音は、初めて俺の目の前で泣いた。……やっぱり俺に心配させないようにか、はたまた心の苦しみに潰されないようにか、笑いながら。


 ここまで琴音を追い詰めたイジメのグループの主格の名前は――熊沢明、彼女だった。

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