Taste of Love【完】
「風香」
「っ……あっつ!」
自分を呼ぶその声に驚き、危うく紙コップごと落としてしまいそうになるのはなんとか阻止したが、熱い中身が風香の手にかかった。
咄嗟に近くのテーブルに紙コップを置き、声をかけて来た人物を振り返ろうとするとぐいっと手を引かれてそのまま調理室へと連れて行かれた。
風香はたとえ振り返らなくてもその声の主が分かっていた。この会社で自分のことを“風香”と呼ぶのは一人しかいない。
歩きながら話す。
「急に声かけてごめん」
熱いコーヒーがかかった右手の手首を握られたまま廊下を歩く。
「私こそ大袈裟でごめん。翔太」
引っ張られたまま翔太の背中に声をかけた。
すると、首だけ風香のほうに向き「昔からかわらないな」と二コリと笑った。
調理室に着くとすぐに水道をひねりそれに手を当てられた。
「冷たい!」
びくっとして手を引っ込めようとした風香の手を翔太がギュッと握って水に戻す。
「当たり前だろう、冷やしてるんだから。ちゃんとしておかないと跡になったらどうするんだ」
風香はおどけた様子で「大袈裟だよ~」と笑ってみるが、その手が緩められることはなかった。
「っ……あっつ!」
自分を呼ぶその声に驚き、危うく紙コップごと落としてしまいそうになるのはなんとか阻止したが、熱い中身が風香の手にかかった。
咄嗟に近くのテーブルに紙コップを置き、声をかけて来た人物を振り返ろうとするとぐいっと手を引かれてそのまま調理室へと連れて行かれた。
風香はたとえ振り返らなくてもその声の主が分かっていた。この会社で自分のことを“風香”と呼ぶのは一人しかいない。
歩きながら話す。
「急に声かけてごめん」
熱いコーヒーがかかった右手の手首を握られたまま廊下を歩く。
「私こそ大袈裟でごめん。翔太」
引っ張られたまま翔太の背中に声をかけた。
すると、首だけ風香のほうに向き「昔からかわらないな」と二コリと笑った。
調理室に着くとすぐに水道をひねりそれに手を当てられた。
「冷たい!」
びくっとして手を引っ込めようとした風香の手を翔太がギュッと握って水に戻す。
「当たり前だろう、冷やしてるんだから。ちゃんとしておかないと跡になったらどうするんだ」
風香はおどけた様子で「大袈裟だよ~」と笑ってみるが、その手が緩められることはなかった。