Taste of Love【完】
「風香の気持ち混乱させるようなこと言ってごめん。あの日待つって言ったのは嘘じゃないし、今でもそう思っている」
 
翔太の真剣な目が風香を射抜く。

「だけど、俺の告白がなかったみたいに振る舞うのはやめて」

「ごめんね。どういっていいかわからなくて」

「分かってる。あせらせたいわけじゃないんだ。ゆっくりでいいから」

 優しい声色に、風香は自分の優柔不断な性格を恨んだ。

(何も考えずに飛び込んでみたらいいの?)

 でもそうできない自分が心の中にいるのも確かだ。

「ごめ――」

 謝罪の言葉は、翔太の指に阻まれた。

「謝ってほしいわけじゃない。ちゃんと答えをだして。そしてその答えがイエスだったら」

 翔太は風香をまっすぐに見つめる。

「俺はお前を一生離すつもりないから」

「翔太……」

 風香は自分が今、どんな顔をしているのかわからない。

 そんな風香のおでこを、翔太がデコピンする。

「じゃあ俺、車止めてから上に戻る。お前はこれ以上ミスしないように仕事に集中すること。これ上司命令ね」

 おどけて言う翔太の優しさを感じて、風香も笑顔を返したのだった。


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