Taste of Love【完】
菜箸を持って鍋の様子を見るふりをして、話をごまかそうとする。

 すると、風香が手にしていた菜箸を真奈美が掴む。

「誤魔化さないで、おねーさんに話してみなさい」

「もう、誰がおねーさんなの?同じ年なのに」

「少なくとも、恋愛においては風香よりも経験があると思うけど」

 確かに真奈美は恋愛の延長上の“結婚”にたどり着いている女だ。風香のよりもレベルはおそらく上であろう。

「で、結局どうなってるの?もうヤッた?」

「ぶっ!」

 口にしていたビールを思わず吹き出す。

「汚いわねぇ」

 真奈美に渡されたおしぼりで、口元と手を拭う。

「だって、真奈美がいきなり……その、あの……変なこと聞くから」

「別に変なことじゃないでしょ。健康な男女がいい雰囲気になったら、そうなるのが自然でしょ?」

「でも付き合ってもないのに」

 口を突き出して不服を顔にした風香に今度は真奈美がため息をつく。

「もうこの歳になって、“よーいスタート”で恋愛が始まるわけじゃないでしょ」

「そういうものなの?」

「そうよ。別にやってみて駄目だったらそれまでだし」

(そんな簡単なことじゃないと思うんだけどなぁ)
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