Taste of Love【完】
「ど、どうしたんですか、なんかとてつもなく情けない顔してますけど」

そう言われて画面を指差す。

「あぁ、スイーツですか……。まぁ上の人ってば女子ならみんなスイーツが好きって思ってるから仕方ないですよ。それに前回の野菜ソムリエとのコラボが大ヒットしたから今回白羽の矢がたったんじゃないですか?」

「まぁ、あれは運がよかったっていうのもあるけど。とりあえず机片付けなきゃ」

そう言って、ため息混じりに作業をはじめた。

風香にとって異動で気が重いのではない。異動先がスイーツ企画室というのが一番のネックだ。

というのも風香は甘いものがダメだ。高校二年までは年頃の女の子相応に甘いものも食べていたし作るのも好きだったのだが今は全く口に入れない。

好んで食べなくなってもう十一年にもなる。いまからスイーツが大好きになるなんて到底無理な話だ。

辞令が断れないことぐらいは理解している。だからこその溜息が次から次へと出て来た。

入社して七年目。去年やっとの思いで参加したプロジェクトでまずまずの成績を残せた。その実績が買われてということであれば誇らしく喜ばしいこと、風香にとっても商品開発に携わる仕事をしているからには、一つでも自分の企画した商品を世にだしたい。

そのためには、新しい企画室がうってつけであるのは間違いなかった。

風香はコンビニが好きだ。父の転勤でいろんな街をてんてんとしていた風香だったが、どの街に言ってもコンビニがあった。

自動ドアをくぐると、決して広くない店内にありとあらゆるものが置かれている。お菓子に雑誌、スイーツ。そこに置かれているものは狭い店内に置かれるために厳選されたものに感じて、行くたびに入れ替わる商品をチェックするのも楽しみだった。

いつか、自分もこの中に置かれる商品を作りたい。

そういう思いで、大学で栄養学を学び調理師免許と栄養士の資格を取得してこのサニーエイトへ就職したのだ。

(頑張るしかないよ!風香)

段ボールにゴソゴソと自分の荷物を入れながら自分に気合を入れた。

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