Taste of Love【完】
***
電車に揺られて三十分。風香と翔太は浅見の店の前に来ていた。
今年はあまり雨が望めなかった梅雨だったが、店の前には綺麗なアジサイが咲いていた。
『パティスリーアサミ』
何のひねりもない店の名前が逆にこだわりを感じさせる。
重厚な木製のドアを開けて中に入ると「いらっしゃいませ~」と声をかけられた。
ショーケースの前にいる可愛らしい女性に、翔太が名刺を差し出すと二階の事務所に上がるように言われた。
二人は店の脇にある階段から二階へと向かい、二階の部屋のドアを開けた。
「失礼します。サニーエイトです」
そう入口で翔太が声をかけると、部屋の真ん中に置かれているソファで何かがもそりと動いた。こちらからは背もたれが邪魔で状況があまり把握できない。
良く見るとそれは足で、少し動いたと思ったら“ぎゅー”っとつま先までのびをしていた。
「う~ん。もうそんな時間?」
そう言って次は、腕がニョキっと背もたれから出て来た。
「お約束いたしておりましたサニーエイトの三栖です」
翔太がそうやって声をかけると、「よいしょっと」と言う掛け声をかけて大きな男性がソファから上半身を起こした。
「どーも浅見です」
背もたれに両腕をついたまま、にこやかにこちらを見ている眼鏡の男性がそこにいた。
するとすっと立ち上がって歩み寄ってきて、翔太に握手を求めて来た。
(思ったよりもフレンドリー?)
取材を受けないと噂で聞いていたので風香はずいぶんな堅物をイメージしていたが、どうやら間違いのようだ。
電車に揺られて三十分。風香と翔太は浅見の店の前に来ていた。
今年はあまり雨が望めなかった梅雨だったが、店の前には綺麗なアジサイが咲いていた。
『パティスリーアサミ』
何のひねりもない店の名前が逆にこだわりを感じさせる。
重厚な木製のドアを開けて中に入ると「いらっしゃいませ~」と声をかけられた。
ショーケースの前にいる可愛らしい女性に、翔太が名刺を差し出すと二階の事務所に上がるように言われた。
二人は店の脇にある階段から二階へと向かい、二階の部屋のドアを開けた。
「失礼します。サニーエイトです」
そう入口で翔太が声をかけると、部屋の真ん中に置かれているソファで何かがもそりと動いた。こちらからは背もたれが邪魔で状況があまり把握できない。
良く見るとそれは足で、少し動いたと思ったら“ぎゅー”っとつま先までのびをしていた。
「う~ん。もうそんな時間?」
そう言って次は、腕がニョキっと背もたれから出て来た。
「お約束いたしておりましたサニーエイトの三栖です」
翔太がそうやって声をかけると、「よいしょっと」と言う掛け声をかけて大きな男性がソファから上半身を起こした。
「どーも浅見です」
背もたれに両腕をついたまま、にこやかにこちらを見ている眼鏡の男性がそこにいた。
するとすっと立ち上がって歩み寄ってきて、翔太に握手を求めて来た。
(思ったよりもフレンドリー?)
取材を受けないと噂で聞いていたので風香はずいぶんな堅物をイメージしていたが、どうやら間違いのようだ。