Taste of Love【完】
(それ聞いてどうなるの。きっと懐かしいだけ)

こういうとき翔太が言いだしたら聞かないのを脳内の十七歳の風香が今の風香に思い出させて「わかったよ。翔太」と答えさせた。

目の前で満足そうに口元を緩める翔太を見たら過去にこだわっているのが自分だけだと実感した。

「風香、箸がとまってる。」

そう指摘されて、残り少ない蕎麦をすすった。

「そう言えば、歯痛くないのか?」

先ほど大悟についた嘘をこんなところで掘り返されるとは思ってもみなかった。

「う、うん。大丈夫みたい」

そう返事を返した風香のランチのトレーにはデザートの杏仁豆腐が手つかずのまま残されていた。
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