何度でも、伝える愛の言葉。

良基さんを忘れてほしくて、忘れさせたくて告白したのは俺なのに、責めるような言い方しかできないことが嫌になる。



『忘れられると思ったよ。樹季くんのこと、』

「ごめん、もう聞きたくない。」


好きだったから、と言ってくれたはずだ。

でも結局良基さんを忘れられなかった事実を前に、その言葉はとても重くて固いものだった。



『ごめんね…本当に。本当に本当にごめんなさい。』


頭を下げたのはもうこれ以上涙を見せたくないからなのか。

そんなことを考えて、次に出てくる言葉を受け流そうと試みてみる。



『私、もうバンドには戻れない。皆と一緒にデビューすることもできない。』


だけど受け流せるはずがない。

短くとも濃い時間を共に過ごして来たから。


俺は、本当に本当に好きだったから。


澪と出会ってバンドに誘って、曲作ってライブして、好きになって付き合って。


こんな結末を迎えることなど想像もできないくらい、明るい未来を信じていた。


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