何度でも、伝える愛の言葉。

『悠くんは、ある?』

「え?」

『実体験を歌詞にしたこと。』


実体験…。

いつか灯里に聞いてほしいと思いながら曲を書いている部分はある。

でも内容はそれに添っているわけではない。



「俺は…」


彼女のことを忘れられずにいつまでも引きずる男の歌…?



「実体験を書くと重くなるから。」

『…重い?』

「引くと思うよ、皆。笑えないから。」


灯里だけに届けたい歌が、本当はあるのかもしれない。

だけど形にしてしまうと、もう終わってしまうようで嫌だった。

灯里は消えた、帰って来ない、そこで終わってしまう気がして…。



『そんなこと、ないと思うけどな。』


またネガティブの穴に落ちそうになったとき、澪がポツリと呟いた。



『重いなんて思わないよ。悠くんにとって綺麗な思い出なんでしょ?それなら引いたりなんてしないし、それに…。』

「それに?」

『歌にしてもらえたら嬉しいと思う。』


…嬉しい?



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