何度でも、伝える愛の言葉。

「でも、綺麗な思い出なんかじゃねぇから。」

『それは、ずっと誰にも言えずに抱えてるからじゃないの?』

「え?」


まっすぐに俺を見る澪の目に、全てを見透かされてる気がした。



『でも歌にして沢山の人に聴いてもらえたら、誰かがそれを肯定してくれるかもしれない。そしたら悠くんも救われるんじゃないかな?』

「俺も…?」

『うん。歌を聴いた人たちだけじゃなくて、悠くんも。』


それが、届けるということだとしたら。

俺はまだ何もしていないのかもしれない。



『あっごめん、偉そうなこと言って。悠くんのこと何も知らないのに…。』

「ううん、ありがとう。澪の言う通りだよ。」


曲を作ることをそういう視点で見たことはなかった。

上辺だけの、綺麗な言葉を並べただけの歌よりも、もっと生々しい…生きている歌を作りたい。

そう思った。



「俺の話、しても良いか?」


俺のことを何も知らないと寂しそうに言った澪に聞いてほしくて、俺は灯里とのことを全て話した。



「重くねぇかな、歌詞にしても。」

『全然重くないよ!歌えば届くかもしれないなんて、すごく素敵な可能性だと思うな。』


純粋な澪の言葉を聞いて、俺は灯里に向けた歌を作ろうと決めた。



「ありがとな。」


澪の頭をポンと撫でると、俺は再びノートと向き合った。



< 46 / 276 >

この作品をシェア

pagetop