box of chocolates
サンタクロース
 ハロウィンが終わると、店には早くもクリスマスを意識したケーキたちが並んだ。父と八潮さんが作ったケーキもお目見えした。ケーキが完成したこともあり、八潮さんは、ぱったりと店に来なくなった。私と貴大くんは、月曜日は毎週のように会っていた。時々、平日の夜に大井競馬場まで足を運んで兄の応援に行くこともあった。ケガから復帰した兄は、復帰戦を見事に勝利し、ウイナーズサークルから、とわさんにプロポーズをした。その日、たまたま貴大くんと一緒に観に行っていた私は、兄があまりにもかっこよくて号泣した。私の泣きっぷりに、本来号泣するはずのとわさんになだめられ。誰がプロポーズされたのやら! と、みんなに笑われた。
『自分の時は、どうなるんだろうね』
……なんて、貴大くんは言っていたけれど。まだ付き合って一年も経っていないし、貴大くんにとって結婚は、他人事なんだろうな。
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